【第1回】ADHDの正しい対策は?何もしないと別の問題に繋がります!


こんにちは!カウンセリングルームすのわ・臨床心理士の南です。
この記事では「ADHD」(エーディーエイチディー)という症状と対策について、初めて聞く方にも分かりやすくお伝えしていきます。この記事を読めば、ADHDについて大まかな知識と、その改善のためにどんな方向性があるのか、といった道しるべを得ることができますよ!
ADHDで悩んでいる方、ADHDの対策について調べている方はぜひ最後まで読んでみてください。きっとADHDの症状を改善するヒントが見つかると思います。

筆者のご紹介

南 和行(みなみ かずゆき)臨床心理士
早稲田大学第一文学部 心理学専修 卒業。ミシガン州立大学大学院カウンセリング心理学科 卒業。ADHD(発達障害)・トラウマ改善専門の「カウンセリングルームすのわ」代表カウンセラー。自身もADHDやトラウマで苦しんだ経験があり、その経験から改善のために試行錯誤を繰り返したことが、カウンセリングの基になっている。目の前の人を最も適切で役立つ方法でサポートすることをモットーに、認知行動療法、トラウマ療法など最新・最適な治療法を提供している。「すべての人には、その人がその人らしく輝くことが出来る可能性がある存在である」そのことをカウンセリングを通じて伝えることを使命としている。ADHDの特化した自助グループ「ADHD交流会」を主宰している。


ADHDの3つの特徴「不注意・多動性・衝動性」

ADHDは発達障害と呼ばれる精神的な症状のひとつです。

英語では「Attention Deficit Hyperactivity Disorder」という長い名前がついており、この頭文字をとってADHDと呼んでいます。以前は「注意欠陥・多動性障害」と訳されていましたが、「欠陥」「障害」という言葉のイメージが悪いため、最新のルールでは「注意欠如・多動症」と呼ぶことになっています。(残念ながらまだあまり定着していませんが)

ADHDの特徴は次の3つに分類されます。

  1. 不注意
  2. 多動性
  3. 衝動性

今回は臨床現場で実際に使われている「DSM5」という診断基準を元に、1の「不注意」についてその特徴と対策を考えていきましょう。ちなみにこの不注意が目立つタイプは「H(多動、衝動性)」を取って「ADD」と呼ばれる場合もありますが、この記事では「ADHD」で統一していきます。

ADHDの診断にはいくつかの条件が必要!

まずADHDによる不注意の症状を並べてみます。

  1. 細かい注意ができず、ケアレスミスをしやすい
  2. 注意を持続することが難しい
  3. 人の話をきちんと聞けない
  4. 指示に従えず、宿題や業務をうまく進められない
  5. 課題や活動を、計画立てて整理することができない
  6. 継続的に行う作業ができない
  7. 課題や活動に必要なものをしばしばなくしてしまう
  8. 外部からの刺激で、注意散漫となりやすい
  9. しばしば日々の活動を忘れてしまう

これらの症状をみて、「こんなの誰もが一つや二つ当てはまるよ、これでADHDなら日本人は全員ADHDなんじゃないの?」とお思いの方、ごもっとも!です。血液型占いのように、誰がチェックしても多少は当てはまりそうな内容ですよね。実はADHDとしての診断基準を満たすためには、この項目のうち大人は5項目以上、子どもの場合は6項目以上のチェックが必要です。

そのため、1~2個当てはまったからと言ってすぐにADHDだと判断されるわけではありません。さらに、年齢ごとのチェックの数を満たした上で、

  • 職場、学校、家庭など2つ以上の状況(場所)で症状がある
  • そのことで本人が困っている
  • 12歳以前から症状がある

といった条件が揃って初めてADHDの可能性ありと判断されます。

ですから、例えば症状が5項目当てはまったとしても、それが原因で本人が日常生活に困っていなければADHDとは言えませんし、慌てて治療を受ける必要もありません。また、大人になってからこれらの症状が出てきたという場合は、うつ病など他の病気の可能性を疑う必要があるわけです。

ここで注意して欲しいのですが、診断基準を満たすほどではなくとも、単にADHD傾向が強いタイプの方もいます。発達障害の傾向がありつつ、診断基準を満たさない方をグレーゾーンと表すこともあります。その方も自分が「ADHDタイプ」だと考えた方が仕事や家庭で周囲との関係がうまくいく可能性が高いです。

カウンセラーの南自身も、診断基準は満たさないもののADHD傾向が強いタイプだと思っています。かつてADHDは子どもの病気で大人になると治ると言われていたそうですが、今では大人100人中2-3人は診断基準を満たすレベルのADHDだと考えられています。これは同窓会で1クラスに1人はいてもおかしくない数字ですから、ADHDは決して珍しい特殊な症状ではないとお分かりいただけるでしょう。

のび太くんは不注意タイプADHDの典型!?

精神科医の司馬理英子先生は、「のび太・ジャイアン症候群」という言葉で、ADHDを表現しました。

ADHDの不注意型を「ドラえもん」に登場する「のび太」にたとえて説明しましたが、のび太のように目の前のやらなければならない課題に心が向かないで、「何かいいことはないかな」とぼんやり窓の外をながめたり、先延ばしにした宿題がどうにもできなくて「ドラえもん、助けてよ」と叫んでいたり、がんばってもなかなか成果が出なくて、お母さんや先生にいつも注意され、しかられて「どうせぼくなんか、何をやってもだめなんだ」と思っている子がたくさんいます。

ADHD のび太・ジャイアン症候群3 ADHD子どもが輝く親と教師の接し方

不注意タイプのADHDの典型として、漫画「ドラえもん」の登場人物、のび太くんをあげています。のび太くんのどういう所がADHDの典型なのでしょうか?

のび太くんと言えばこのようなイメージを持たれる方が多いと思います。

  • いつも宿題を忘れて廊下に立たされる
  • 授業中もぼーっと外を見ていて先生の話を聞かず叱られる
  • 勉強をしていても、すぐに他の事に気を取られて集中できない

どう考えても優等生タイプではなく、いつも先生に怒られていますよね。
これらの特徴はADHDの方に見られるものと似通った部分が多く、司馬先生が提唱した「のび太=ADHD不注意タイプ」という話は確かにうなずけます。

またのび太くんはマイナス点ばかりではなく、

  • 好きなこと(あやとりや射撃)では人並み以上の集中力を発揮する
  • 小さなことは気にせずに、失敗してもすぐ忘れてしまう

と言った傾向があり、これらもADHDの人によく当てはまりますので、とてもわかりやすくよく出来た例えだと思います。一般的にのび太くんと言えば怠け者のようなイメージが強調され、得意なジャンルでは活躍しているのにあまり注目されていない・・・というのも、ADHDの方と共通の悩みであると言えるでしょう。

ADHDは「怠け者」や「努力不足」ではありません!

先ほどADHDの方はのび太くんと共通点があると言いました。これを現実社会に当てはめると次のような場面になります。

  • 仕事で不注意やミスが多く、指導されても治らない
  • 根気がなくて、いろんな仕事が長続きせず職を転々とする
  • いつもぼーっとしていて人の話を聞いていない

このようなタイプの人は、世間一般から「怠け癖がある」「だらしない」「情けない」とみなされてしまい、のび太くんと同じように本人の性格や努力の問題としてマイナス面ばかり批評されがちではないでしょうか?

しかし、その行動の背後にADHDがある場合は、いくら「怠けてないでしっかりしなさい」と叱ったところで一時的な対処にすぎず、本来の解決にはつながりません。それどころか、より自信を失って萎縮してしまい、緊張やストレスで状態が悪化するケースが多く見られます。ADHDは本人の「怠け」や「努力不足」ではなく、脳の特性・クセのようなものです。脳の特性であるがため、本人のがむしゃらな努力だけでは改善は難しいのです。

ADHDを放置すると離職や離婚など別の問題につながります!

自分にADHDの傾向があることを理解せず、単に注意力が足りないだけだと片付けてしまっていると、同じ失敗を繰り返してしまいます。そのことで周りから責められ、自分でも自分を責めて心が疲れてしまい、さらにミスを重ねるという悪循環にはまってしまう方もいます。

この悪循環は、うつ病、不安障害などの2次的な問題を引き起こし、「自分はなんてダメな人間なのだろう」と自尊心を低下させ、生活の満足度や充実感を失う原因となります。ADHDの方は退学率・離職率・離婚率が高い傾向にあると言われていますが、それは飽きっぽいとか甲斐性がないといった性格的な理由ではなく、ADHDを正しく理解できていないために心や行動のセルフマネジメントができず、周囲との人間関係にトラブルを起こしてしまうからだと考えられます。

私が以前働いていた心療内科クリニックでも、うつ病になって受診し、医師からADHDの可能性を指摘されて初めて自分の傾向に気づく人も少なくありませんでした。他の大きな問題へと繋がる前に、正しくご自身のADHD傾向と対策を把握することが大切です。

あなたのADHDは少しのコツを知ることで改善できます!

「カウンセリングルームすのわ」では、これまで闇雲に努力してもADHDを改善できずに苦労してきた方に、正しい理解に基づいた改善策を提案しています。

例えば当ルームで行っているADHDの認知行動療法ではこんな対策があります。

☆用事を先送りにしてしまいがちな人への改善策

最も簡単で効果的な対策が、ノートとカレンダーを使ってやるべきことがいつでも見られる状態に整理することです。

ADHDの一番の特徴は飽きっぽいことですから、最初上手くいっていた方法も飽きてくるとやらなくなりがちです。カウンセラーはそういったクセを正しく理解していて、その傾向について前もって話をしたり、必要なタイミングで励ましたり行動を促したりといったお手伝いをすることができます。そして改善のための行動が習慣として身につくまで、毎回のカウンセリングで確認していきます。

この習慣を身に付けることで、ズルズルと先送りにした締め切りに追われて時間ギリギリの毎日を過ごしている方も、時間に余裕を持って仕事や課題を終えることができるようになります。その結果、心と時間に余裕が生まれ、いつも何かに追いかけられている不安な気持ちがなくなりますので、落ち着いた状態で自分本来の能力を発揮できます。

☆必要な物をいつも無くしてしまう人への改善策

ADHDの人は注意があちこちに飛びやすいので、大事なものを持っていても次の瞬間別の事に注意が向いてしまうと、その大事なものをどこに置いたか分からなくなりがちです。

例えばカギや財布が部屋の中ですぐに行方不明になってしまう方への改善策としては、カギはドアの近く、財布は決まった引き出しの中など置き場を決めて、常にそこに置くように習慣づけます。ここでも、ADHDの人は習慣づける前に飽きてしまい同じ失敗を繰り返しがちですが、問題がなくなるまでカウンセラーは諦めずお手伝いを続けていきます。

気がつくといつも何か物を探していて、人生の貴重な時間を無駄に過ごしてしまっていませんか?とてもシンプルな方法ですが、「物の置き場を決める」という習慣を身に付けるだけで自由に使うことができる時間が増えるのです。朝出かける前にカギがない!財布がない!と昨日着ていた服のポケットを探すようなドタバタがなくなって朝の自由時間が増えたら、コーヒー一杯をゆっくり楽しむ時間ができるかもしれませんね。

このように、ADHDという理解をしたうえで、ADHDに合った改善策をとっていけば多くの方は目に見えて状態が改善します。そのお手伝いをするのが、カウンセラーとしての私の仕事です。

ADHD=悪い病気ではありません

もう一度のび太くんの例を思い出してみましょう。

あまり知られていませんが、彼は単なる怠け者ではありません。特に射撃の腕前は超一流と言ってよく、映画版では「宇宙一の殺し屋」と呼ばれた相手にピストルの決闘で打ち勝ったこともあります。もし射撃に本腰を入れれば国体やオリンピックも夢ではないでしょう。

またのび太くんは感受性がとても高く、しずかちゃんの父親からは「他人の不幸を悲しみ、他人の幸せを喜ぶことができる素晴らしい人間だ」と絶賛されています。彼は学校教育の場に設置された「普通のレール」にほんの少し反りが合わないだけで、人間として大切な心の豊かさを十分に持ちえている少年なのです。

現実のADHDの方にも、良いところはいっぱいあります。発想が独創的で豊かだったり、自分の失敗が多いので人の失敗にも寛容だったり、興味のあることに対しては人並み以上の集中力を発揮できる人も多くいます。良い面も多くあるADHDですが、多くの方が「自分の実力を発揮できていない」と感じているのではないでしょうか?

正直に言うと、カウンセラーである私自身がそうでした。もっとできるはずと思っていながら、いつも詰めが甘かったり、先延ばしにしたりで、「自分は怠けもので人より劣っている」と自分を責め続けた時期もありました。

その時の自分のような、自分を責めてしまっているADHDの方に伝えたいメッセージがあります。

「ADHDを正しく理解することで、あなたの良い部分に光を当てて、あなたの存在をもっと自信を持って周りに表現していくことができる」

ADHDの悪循環から抜け出して、自分の良さを周りに伝えたい。
もっと自分に自信を持ちたい。

あなたが今そんな気持ちになっているなら、認知行動療法で人生を変える準備は十分整っています。あとは少しの勇気を出して、当ルームのドアを叩いてみてください。必ず私が力になります。

この記事のまとめ

  • ADHDは脳の特性のひとつで、怠けや努力不足ではありません。
  • ADHDを放置しておくと他の問題を引き起こすことがあります。
  • トラブル改善のためにはADHDを正しく理解し対策を知ることが大切です。

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